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役員退職金について

株式譲渡によって会社を勇退する際、『役員退職金』を支給する場合と、
支給しない場合があります。

役員退職金は、「最終報酬月額×勤続年数×役職に応じた功績倍率」
という計算により算出されます。
功績倍率は代表取締役の場合3倍、役員は2倍程度までを目安として考えます。
仮に社長が報酬月額100万円、勤続年数10年であった場合には
100×10×3=3000万円が目安となります。

ただ株式譲渡する際にはこれを支払うべきか、
『最終的な手取りが増える』ように考える必要が出てきます。

初めに結論から言えば、オーナー(株主、売り手)側も、
買い手側も役員退職金は支払った方が得になることが多いと言えます。

今回は上記結論についてのご説明をいたします。

まず株式を譲渡した際には、譲渡益に対し約20%の税金
(所得税15%、住民税5%、復興特別所得税0.315%)がかかってきます。
譲渡益は売却額から株式を取得した値段を差し引くものです。

例として創業者であれば、投下資本金を売却価格から引くと譲渡益が割り出されます。
もし他社から買った会社(株式)の場合は、買った値段を売却価格から引くという形になります。

仮に株式譲渡価格が1000万円、取得した株式が200万円であれば、800万円が譲渡益になります。
この時、役員退職金を支払わなかった場合であれば、譲渡益に対し税金は約20%⇒約160万円が
オーナー側にかかり、手取りとしては840万円となります。


では、もしこの時に200万円の役員退職金を支払ったらどうなるのでしょうか?

株式価値を当初1000万円に設定したと仮定

役員退職金として200万円を現金から支払う

その分株式評価額が200万円下がる

株式譲渡価格が800万円に値下がる

譲渡益が600万円に下がる
 
計1000万円が残るという形には変わりはありませんが、
内訳が退職金200万円+株式譲渡価格800万円になります。

上述の通り、譲渡益に対しての課税は20%です。
よって株式譲渡金額600万×20=120万円となり、
先ほどの180万円より60万円多く手元に残ることになります!

またキーポイントなるのが、退職所得に対する税金の優遇制度です。
退職金は課税対象とされていますが、退職まで勤め上げたことに対する労いの意味もあり、
退職所得控除という控除が発生いたします。

控除額は、勤続年数20年までを年40万円、20年を超える部分は年70万円となります。
仮に勤続年数10年の場合、400万円(10年×40万円)のを控除できます。
30年であれば1,500万円(20年×40万円+10年×70万円)の退職所得を控除できます。

つまり先ほどの退職金200万円については無税で受け取れる形になります。

その結果、手残りとして
800万(株式売却額)-120万(税金)=680万円
200万円(退職金 ※退職所得控除により無税)
の合計880万円が残ります。

役員退職金を支払わない場合と比較して、40万円差がでます。

今回は分かりやすくするために比較的小さな金額でのシミュレーションでしたが、
実際はもっと大きな金額が差額として発生することは大いにあり得ます。

また買い手側も現金支出が軽減されたり、
退職金は損金算入が可能な為、その他税金面でのメリットも生じます。

結論、買い手側も売り手側にもメリットがあるというお話になります。


以上、今回は役員退職金についてのお話でございました。

少しでも、M&Aという選択肢をご検討されるのであれば、
是非一度営業権・企業価値の算出だけでも
ご相談いただけましたら幸いです。

全国どこへでも、すぐにお伺いさせていただきます!

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