M&A
あなたは大丈夫?増税と改定のあれこれ
■ 消費税10%時代の到来
もう目前まで迫った消費税増税。これまでより余計にお金がかかることに喜ぶ人はあまりいないのではないでしょうか。
普段の買い物だけでなく、増税は調剤薬局業界にも大きな影響を及ぼすことが予想されています。
今回は、増税によって増加する薬局M&Aに対して、「経営者目線」「従業員目線」で考えてみようと思います。
■ 経営者目線
前回の5%から8%に増税した際は薬価と報酬の改定で実質90%の補填でしたが、医療費を抑えたい政府の方向性もあり、今回も100%補填とはならないでしょう。コスト増に伴って利益が圧迫される可能性が高いため、将来M&Aを検討されている方は「譲渡時期」と「譲渡スキーム」を検討する必要があります。
図1のように、改定の前後3ヵ月ほどは改定の影響がわからないため買手は投資回収の計画が立てにくく、どうしても全体的に弱気な相場になりがちです。
また今後の改定でも減収減益になることが見込まれているため、買手の資金力低下、売手の経営内容の悪化、増税による譲渡価格の増加などリタイアを考えていらっしゃるオーナー様には逆風です。譲渡のタイミングを見極めることが非常に大切です。
さらに譲渡スキームによって消費税の有無が変わります。図2のように会社ごと株式譲渡した場合、株式売買は非課税なので譲渡総額1億円に対して買手が消費税が課されることはありません。また、売手も株式売買に掛かる税金は約20%なので手元に8,000万円が手元に残ります。
一方で、図3の事業譲渡の場合は譲渡総額に対して消費税が課されます(土地、債券など非課税資産を除く)。増税後は譲渡総額1億円に対して1,000万円の消費税がかかります。売手側も譲渡代金が法人の特別利益となるため退職金でも払い出しなど経費で相殺しなければ30%を超える法人税が課されます。
金額だけの問題ではございませんが、ケースバイケースで譲渡スキームを検討する必要があるでしょう。
■ 従業員目線
増税と改定のたびにM&Aが盛んに行われており、ユニヴに転職相談をくださる薬剤師からも「自分の店舗がM&Aされて……」なんてことも珍しくなくなりました。
勤務店舗がM&Aされたとき、どうすればいいでしょうか。
勤務先がM&Aされた
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① 退職する
かかりつけ薬剤師など勤務年数を重ねることに価値が出てきているため、転職は慎重に行いましょう。事務員のピッキング解禁で薬剤師の年収が上がりにくくなる可能性も心に留めておくべきでしょう。
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② そのまま残る
●買手が大手薬局の場合 ほとんどの場合、1年後に給与の見直しが行われますが、福利厚生などが充実しています。また引継ぎにも慣れておりトラブルがあった際もしっかり対応してくれます。
●買手が中小企業の場合 給与に関しては柔軟な対応が多いですが、引継ぎに慣れていない場合はM&Aの前後でさまざまなトラブルが起こる可能性があります。
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③ 独立する
譲渡希望の増加に加えて、譲渡価格は減少傾向なので、良い案件を安く承継できる可能性があります。
薬剤師の年収が上がらない時代なので、独立を視野に入れても良いかもしれません。 -
check!!
ユニヴでは独立希望の薬剤師さん向けに勉強会を行い、独立の準備をお手伝いしています。実際に譲渡案件のマッチングもしており、たくさんの薬剤師さんが自分の店舗を手に入れています。
消費税、改定、M&Aといくつかのキーワードをもとに経営者、従業員それぞれの立場から考察を行ってまいりましたがいかがでしたでしょうか。調剤薬局業界は大きなターニングポイントを迎えており、一度きりの人生を後悔しないために変化を捉えた柔軟な対応が求められています。
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