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業務提携とは?メリット・デメリットや薬局の業務提携事例など

世の中には、さまざまなビジネスの形態があります。企業を成長させるためには、必ずしも自社の資源のみで勝負しなければならないというわけではありません。さまざまなビジネスモデルの中には、「業務提携」という他社の資源を活用した方法もあります。

そこで今回は、業務提携の詳しい概要や代表的な種類から、メリット・デメリット、進め方、実際の事例を紹介します。業務提携について詳しい知識を得たうえで実施の可否を判断したいという人は、ぜひ参考にしてください。

 

1.業務提携とは?

業務提携とは、複数の企業がそれぞれ有する技術やノウハウを提供し合い、協力体制を築きながら事業に活用するビジネスモデルです。業務提携では、各企業の状況や提携目的に応じた契約を行います。

業務提携の特徴は、「対等な関係性が基本となる」こと、そして「資本の移転はしない」ことの2点です。

業務提携を結び合う企業は、それぞれ規模が大きく異なることも多々あります。しかし、対等な関係性が基本となるため、たとえ大規模の企業が中・小規模の企業に業務を委託するケースでも、対等な立場で提携する必要があります。

また、業務提携はあくまでも企業資産のみを提携するため、資本を移転する必要はありません。しかしその分、関係性構築に何らかの影響を与える可能性もあるため、業務提携を結ぶ際は「資本業務提携」を行う場合もあります。

 

1-1.業務提携の代表的な種類3つ

業務提携の種類は、下記の3つが代表的です。

技術提携 一方の企業(A社)が有する技術的な資産を提携先の企業に提供し、資産提供のされた企業(B社)はそれを活用して開発・製造を行います。両者がそれぞれ独自の技術資産を提供し合うケースもあります。資産の使用対価を支払い使用許可を得る方式が「ライセンス契約」、各企業の技術資産を提供し合い、共同開発を行う方式が「共同契約」です。
生産提携 製造設備などを有する一方の企業(A社)に対し、もう一方の企業(B社)が一部の製造業務を委託して生産能力を補完する提携方法です。「OEM」「ODM」が代表的な例となります。
販売提携 独自の販売ルートを有する販売力に優れた企業(A社)に、商品・製品の開発・供給に優れた企業(B社)が販売を委託する提携方法です。「販売店契約」「代理店契約」「フランチャイズ契約」が代表的な例となります。

 

1-2.業務提携と似た言葉の違い

「業務委託」「M&A」「資本提携」は、業務提携と似た言葉・似た意味をもつ言葉であり、混同して考える人も少なくありません。しかし、これらはすべて違った意味をもつ言葉です。

〇業務委託との違い

業務委託とは、何らかの理由で社内で行えない一連の業務を、委託先企業に完全に委託する方法を指します。委託業務の終了後に、その対価として委託料を支払うことが基本です。一方で業務提携は、特定の業務を複数の企業が協力して行うことを指すため、業務委託と業務提携は異なる方式となります。

〇M&Aとの違い

M&Aとは、譲渡企業が株式(経営権)を買収側企業に譲渡し、親会社・子会社の関係を構築する方法を指します。買収側企業は親会社として、譲渡企業を子会社に迎えることとなり、事業の新規開拓などを行える点がメリットです。子会社化する譲渡企業にも、後継者問題の解決や事業継承が可能となるというメリットがあります。業務提携は株式譲渡することはないため、M&Aとはまったく異なる方式となります。

〇資本提携との違い

資本提携とは、一方の企業が経営権に影響を与えない程度にもう一方の企業の株式取得をし、出資をメインとして協力関係を築く方法を指します。何らかの業務に協力するのではなく、企業同士の結びつきを強めながら互いの業務・資金面に協力するため、業務提携とは大きく異なります。

 

2.【薬局】業務提携のメリット・デメリットとは?

自社の資源のみを活用しながら企業を成長させていくことができれば、当然それが最もよい方法です。

しかし多くの場合、自社で活用できるリソースには限りがあり、リソースを確保するためには膨大な時間とコストがかかります。また、費用をかけたからといって必ずしも成果があらわれるわけではありません。業務提携は、このようなあらゆるリスクを避けつつ目標達成を目指すために行われるものです。

このように聞くと、業務提携には多くのメリットがあるようにも思えるものの、もちろん注意しておくべきデメリットもあります。ここからは、業務提携の具体的なメリット・デメリットを紹介します。

 

2-1.【メリット1】コストを削減できる

業務提携は、目標達成に向けた取り組みに発生するコストを削減できる点が大きなメリットです。

企業の成長に必要なリソースがもとから整っている企業は、ほとんどありません。自社の資源を活用して技術力・生産力・販売力を高めるためには、人材育成・開発・改善などあらゆる面で膨大な時間やコストが発生します。

しかし、業務提携を行えば他社の優れた経営資源を役立てられ、コストを抑えながら求める技術・能力をスピーディーに得ることが可能です。コストのみならず、時間も大いに削減できるでしょう。

 

2-2.【メリット2】他社の長所を生かせる

業務提携のもう1つのメリットは、「業務提携を通じて、他社の強みや自社では得られなかったようなアイデア・技術を得られる」という点です。

オープンイノベーションが主流となり始めた近年、すべての技術・ノウハウを自社で1からつくり上げていては、目まぐるしく変化する時代についていけなくなる可能性も十分にあります。

業務提携は、外からでは見えづらい他社の生産・販売プロセスをチェックすることができるため、いわゆる「他社の優れた資産を真似できるチャンス」ともいえるでしょう。また、お互いにない長所を生かし合うことでシナジー効果も期待できます。

 

2-3.【デメリット1】技術・ノウハウが流出する可能性がある

業務提携を検討する際は、デメリットもしっかり把握しておきましょう。特に注意すべきは、「自社の技術・ノウハウが流出する可能性が0ではない」という点です。

企業秘密となる技術・ノウハウを故意に流出させられることはほぼないと考えてもよいものの、相手先企業の情報管理体制が甘い場合は何らかのトラブルで流出させられてしまう可能性があります。

そのため、業務提携を結ぶ際は相手先企業の情報管理体制についてもチェックしておくとよいでしょう。

 

2-4.【デメリット2】提携関係がなくなる場合がある

業務提携はM&Aや資本提携とは違って、株式の取引や資本の移動は行いません。そのため比較的簡単に提携関係を構築できる一方で、強固な関係性の構築ができず提携関係の解消がされやすいというデメリットもあります。

相手先企業にとって業務提携のメリットがないとみなされると、突然一方的に提携関係を破棄される可能性も0ではありません。そのため、双方に利益のある提携関係を常に意識しておかなければならないことに注意が必要です。

 

3.【薬局】業務提携の進め方

業務提携を進めるためには、事前の準備や計画が欠かせません。ここからは、薬局(ドラッグストア含む)・調剤薬局業界にも対応する業務提携の進め方を紹介します。

1 業務提携をする目的を明確化する
業務提携の検討段階では、まず目的を明確にするところから始めましょう。ひとくちに業務提携といってもあらゆる方法・種類があるため、目的を達成するためにはどのような方法を実施するべきかまで考えることが重要です。
2 提携先を選定する
業務提携の目的や適切な方法を検討したあとは、適切な提携先を選定しましょう。提携先探しには、金融機関による紹介・ビジネスパートナー支援サイトの活用などが便利です。中には取引先と業務提携を結ぶ企業もあります。
3 業務提携の打診・交渉をする
適切な提携先の選定が済んだら、業務提携の打診・交渉をしましょう。金融機関による紹介・ビジネスパートナー支援サイトの活用から選定した企業の場合、選定時点では強みや弱み、さらに期待できるシナジー効果が不明瞭なため、何度かの話し合いを重ねて条件のすり合わせや交渉を行う必要があります。またこのとき、秘密保持契約を結んでおくことも大切です。
4 費用・役割分担などを決める
業務提携の打診・交渉が進んだら、業務提携を行う中で起こり得るトラブルを防ぐために、提携先と事前に費用・役割分担・利益配分を決定します。双方が納得できるよう、公平性を保って交渉することが重要です。
5 業務提携契約書を結ぶ
提携先と費用・役割分担などを決めたあとは、業務提携契約書を結びます。業務提携契約書には、事前に決定しておいた交渉内容をすべて記載したのち、改めて双方で契約内容を確認したのちに締結しましょう。

 

3-1.業務提携契約書を結ぶときのポイント

業務提携契約書を結ぶときは、在庫品の管理および処分について取り扱い事項を記載することが重要です。

業務提携期間の終了とともに、期間中に製造した在庫品をすべて販売することは不可能でしょう。残った在庫品が、提携期間の終了後に市場に出回るリスクも0ではありません。また、いずれかの企業が在庫の処分費用を負担する必要も発生します。

残った在庫品の管理・処分に関するトラブルが発生しないよう、業務締結契約書を結ぶ際は在庫品に関する取り扱い事項を明確に記載しておくことが大切です。

 

4.薬局業界の業務提携事例2選

薬局業界でも、大手企業における業務提携事例がいくつか存在します。

「株式会社マツモトキヨシホールディングス」は、2009年8月に生鮮コンビニの「ローソンストア100」と業務締結を結びました。2010年7月17日には、店内改装によりローソンストア100が組み込まれたマツモトキヨシ浦安東野店がオープンしました。

出典:LAWSON「「マツモトキヨシ」と「ローソンストア100」の共同店舗オープンについて」

また、2020年6月には「株式会社スギ薬局」と「株式会社PREVENT」も業務提携を結びました。スギ薬局の管理栄養士をより有益に活用して重症化予防事業を拡大させたり、各企業が提供するサービス連携のもと、一気通貫型の予防や医療サービスの展開を進めています。

出典:スギホールディングス「株式会社スギ薬局と株式会社 PREVENT との業務提携のお知らせ~ 重症化予防プログラムの提供 ~」

業務提携により、顧客のニーズはもちろん、地域ならではの特性をふまえた商品・サービスの提供ができ、顧客サービスがより充実したという事例はほかにも数多くあります。少しでも長く薬局経営を続けたいという場合は、業務提携も視野に入れてみてはいかがでしょうか。

 

まとめ

業務提携とは、複数の企業が自社で有する技術やノウハウを提供して協力体制を築きながら、各企業の事業に活用することを指します。主に技術提携・生産提携・販売提携の3つの種類があり、いずれの方法にしても「対等な関係性」「資本の移転なし」が基本です。

業務提携はコスト削減・他社の長所を生かせるというメリットがある一方で、技術やノウハウの流出リスク、提携関係の一方的な破棄などといったデメリットも存在します。

業務提携を行い、あらゆるリスクを避けつつ着実に事業を成長させるためには、適切な提携先選び・公平性を保った交渉・双方が納得する正確な業務提携契約書の締結が重要です。ここまでの内容を参考に、ぜひ業務締結を検討してみてはいかがでしょうか。

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