薬局経営お役立ちコラム COLUMN

M&A

薬局業界に迫るM&A

隣の薬局の名前が変わった…! 友人の会社がM&Aされた…!
そんな言葉を身近に耳にする機会が増えましたよね。
大変そうだな〜と他人ごとに思っているそこのあなた!
明日職場に行ってみたら急に会社名が変わっていた…なんてことがあるかもしれません。
今回は、実際にM&Aを経験された2人の薬剤師さんにお話を伺いました。M&Aのリアルな現場を覗いてみましょう。

勤務先調剤薬局が大手調剤チェーンに買収 (40代男性)

●どのように買収を知りましたか

私自身は会社のNo.2だったため、M&Aの2か月前に社長から直接知らされました。その後、相手先と実務引き継ぎ調整などを行うため、2か月間は社員の誰にも話をすることはできませんでした。社員の皆さんはM&A当日に、社長からの書面が朝礼で発表され、初めて知らされることとなりました。

●現場の様子やご自身のお気持ちはいかがでしたか

当初は子会社として存続する、つまりは現状維持されるというお話だったため、社長が交代するだけで大筋は変わらないという認識でした。従ってそれほど悲観することはありませんでした。しかし、その2か月後に吸収合併されることが発表され、会社の名前が変わった時点で社員に不安が生じ始めました。また相手先が、文化・価値観ともに大きく異なる企業だったため、それまでの自分たちの文化が否定されたように感じました。

●職場環境に変化はありましたか

給与条件は下がることとなりました。また正社員の条件は他店への異動の可否によって、準社員もしくは40時間勤務しても非常勤(パート)の待遇提示でした。合併後、個別に面談が始まり、待遇が下がるため退職を決意する社員が増え始めました。

●薬剤師の皆さんへメッセージ

M&Aは友好的なものもあると思いますが、私共のようにこれまでの待遇から条件が悪くなり、企業文化・価値観が大きく変わってしまうこともあります。経営者がM&Aを決断する理由はやむを得ない事情もありますが、ほとんどが厳しい課題に対し、社員の皆さんから協力が頂けないことにあります。もし自分たちの薬局がM&Aされたら、今よりも待遇が悪くなるかもしれない、転職しても良い条件は難しいかもしれない、という現実もよく考えた上で日々の業務に従事することが大切だと思います。自分たちの職場は自分たちが努力して守る、という意識を持つことができれば、良い文化を持つ薬局は今後も生き残っていけるのではないかと思っています。

勤務先病院が別法人に買収 (30代男性)

●どのように買収を知りましたか

スタッフにはM&Aされる数か月前に公表されました。ただ正式な公表から実際に譲渡されるまでの期間があまりにも短かったため、転職活動に充てる時間の余裕もなく戸惑いました。

●現場の様子やご自身のお気持ちはいかがでしたか

日々患者が増える中、現場では退職者が続出したため、一人あたりの業務量が増え、残ったスタッフは大変忙しくなりました。また、新しい運営会社の情報が少なかったため、とても不安な気持ちになりました。今はインターネットなどで様々な情報を見ることができるので、そこであまり良くない情報を見つけるとさらに困惑しました。

●職場環境に変化はありましたか

以前の職場は人件費削減等を目指して、慢性的にマンパワー不足であったためできることが限られていましたが、新体制では経費がアップし人員も確保できたことにより、業務の幅が広がり、やりがいを感じました。日々の実務面に関しては、メリットもあったことは事実です。ただ、福利厚生の差が大きく、収入面も最初数年間は保証されるものの、先々は不透明な部分が多く不安は大きかったですね。

●薬剤師の皆さんへメッセージ

M&Aする側される側、どちらもメリット・デメリットがあります。M&Aされる側にいた私としては、仕事に対して自分の中で大切にしていた気持ちと、その気持ちが自分にとってどれ程重要だったかを、環境が変わることによって再確認できたいい機会だったと捉えています。もし皆さんもご自身の職場がM&Aに直面した際は、今自分が薬剤師としてどうしたいか、どうあるべきかを考える良い機会にしていただけたらと思います。

押し寄せるM&Aの波とその実情

押し寄せるM&Aの波とその実情

経営者の高齢化、二年に一度の診療報酬改定による収益性の先行き不安、薬剤師不足、大手調剤薬局のM&A攻勢などにより、調剤薬局おけるM&Aは飛躍的に増加しています。 現在、全国の調剤薬局の店舗数は約58000件です。しかしながら、大手調剤チェーン上位10社における業界占有率はわずか13.8%に留まっています。すなわち、約8割が中堅・中小の調剤薬局で構成されていることになります。 他業界における占有率で考えると、例えばコンビニや銀行など、ほとんどの業界が大手4社に集約されるという傾向があります。そのため、今後もM&Aを活用した中堅中小及び個人規模薬局の買収は継続的に行われるのではないでしょうか。 一方、調剤薬局の収益性に関しては、政府の医療費削減の方針が続くと見られ、薬価引き下げや調剤報酬の下落により調剤薬局の利益縮小が予想されます。規模の経済が働きやすい市場でもあるため、大手調剤チェーンのスケールメリットを求めた合併・買収は、今後も加速する見通しです。しかし2016年4月の報酬改定では、40000枚ルールやかかりつけ薬剤師制度が大手調剤チェーンの収益に大きな影響を与えました。そして2018年4月の改定は、介護報酬改定と重なり調剤報酬が更に削減される為、今後M&Aの相場も一層の下落が予想されます。 そのような背景もあり、以前は高額で売却されていた薬局も現在は半値以下の価格で取引されることが多く、収益性の悪化から売買が成立しない薬局も少なからず出てきています。また現在58000件ある薬局を35000件まで減少させようとする政府の方針も踏まえ、M&Aで売却できない規模の薬局は、閉店・廃業という流れもあるのが実情です。 つまり、皆さんがお勤めの店舗が急にM&Aされたり閉鎖になる恐れが、今後ますます高まっていくのです。

M&Aされる前に心得ておくこと

まず、勤務店舗の経営状況を確認してみましょう。レセコンのデータから店舗の売上がわかれば良いですが、難しい場合は一日あたりの処方箋枚数と配置されている薬剤師人数からおおよその収支を計算し、ご自身がその規模に見合った年収であるかを確認してみてください。 例えば、眼科門前で一日30枚程度の店舗に、事務員と薬剤師2名が勤務しているとします。 在宅やその他医療機関からの応需状況によって一概には言えませんが、このような形態の店舗であれば年収500万円でも高い年収です。 このような環境でもし薬剤師の年収が800万円であれば、薬局の経営をかなり圧迫しているかと思いますので、経営者からすれば閉じたい店舗、売却したい店舗と考えるのが普通です。もし皆さんがそのような環境にいるのであれば、処方箋枚数を増やすなど、売り上げをメイクする工夫をしない限り長くその店舗で勤務するのは難しいかもしれません。

M&Aされた後に注意すべきこと

まず会社からの告知についてですが、ほとんどの場合が突然であることを念頭に置いておきましょう。一部店舗を売却する場合は稀に事前に告知され、他の店舗に移るか買収した会社で勤務するか転職するかの相談を受けるケースがありますが、会社ごと売却される場合は従業員へ告知するのは売却することが決まった後になりますので、事前にわかることはほとんどありません。 実際の勤務については、買収した企業の従業員が強く、買収された側の従業員は追いやられていくのではないかというイメージがあるかと思います。しかし調剤薬局の業界ではそのようなことはあまり無く、貴重な人材として重宝されるケースは少なくありません。 もちろん経営者が変わるので、経営方針の変更で問題も生じるかと思います。例えば本社の担当者がやってきて、今まで以上に厳しい在庫管理を徹底したり、服薬指導の時間を減らしより効率的に動くべきと指示するなど、これまでのやり方と180度違ったスタイルを求められるかもしれません。また待遇面も買収した企業の社内規定の水準に変更され、年収が下がったり昇給率が下がったりするケースも考えられます。 しかし、まずは買収された後もすぐに転職を考えるのではなく、ある程度条件面の交渉などを行い、条件面での相違があった場合はしっかりと引継ぎなどを行ったうえで転職活動されるのも一つの手段かと思います。 薬剤師の売り手市場が終わりに向かいつつある状況で、今後「前職は大手調剤薬局に買収されましたので退職しました。」という転職理由は通用しなくなります。

M&Aをチャンスに変える

少なくとも調剤薬局業界に身を置かれる限り、今後M&Aに遭遇しない可能性は極めて低いと思います。業界再編が進むことは明確…その中で、どのように立ち回るかによって、自身のキャリアを形成されてみてはいかがでしょうか。 M&Aされた企業で勤務するのも一つの選択肢です。M&Aを一つの契機として新たな環境にチャレンジするのもまた一つの選択肢です。 薬局業界に押し寄せるM&Aの波は、もしかすると皆さんのキャリア形成において、予想外のターニングポイントになるかもしれませんよ。

コラム一覧へ戻る