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廃業とは?廃業件数の最新動向から流れ・費用・よくある疑問まで

「廃業」と聞くと、「経営の悪化によって事業継続が困難になる」といったイメージがあります。しかし実際は、後継者不足などのやむを得ない事情から自主的に廃業を選択する企業も少なくありません。

この記事では、廃業を検討している方に向けて、廃業のメリット・デメリット、具体的な手続きの流れ、廃業を回避する方法などを詳しく解説します。廃業に関する基礎的な知識を得た上で、会社と関係者の将来のために適切な選択を行ってください。

 

1.廃業とは?

廃業とは、会社や個人事業を当事者の意志で辞めることを指します。廃業の理由や原因はさまざまで、経営状況が思わしくないことを理由に廃業するケースもあれば、経営者の高齢化などの問題によって自主廃業するケースもあります。

事業を辞めるといっても、単に店舗や事業所を閉めて取引を停止するだけでは「廃業」になりません。 個人事業の場合は廃業届などの提出、法人格を取得している会社の場合は会社法で定める解散・清算の手続きを行う必要があります。

 

1-1.廃業と「倒産」「休業」の違い

廃業と同じく事業の状態を表す言葉に、「倒産」「休業」があります。

倒産とは、債務の支払いが不能になるなど経営に行き詰まり、事業活動の停止を余儀なくされることです。廃業と違い、倒産は会社や個人事業の当事者の意志で行うものではありません。

一方、休業とは会社や個人事業の活動を一時的に停止させることです。店舗の定休日などを表す言葉として日常的に使用されていますが、会社が長期にわたって事業停止する場合も「休業」と呼ばれます。廃業と違い、休業は事業が停止している状態であり、会社や個人事業そのものがなくなるわけではありません。

 

1-2.廃業のメリット・デメリット

廃業の選択を検討する際は、廃業によって得られるメリット・デメリットを正しく理解する必要があります。

廃業のメリット
  • ・経営者が会社経営のストレスや後継者問題などの悩みから解放される
  • ・手元資金を残して自主廃業することで、関係者への迷惑を最小限に抑えられる

自主的な廃業の場合、買掛金の返済や従業員への退職金支給ができるため、倒産の危機に直面する前に会社を廃業することには大きなメリットがあります。

廃業のデメリット
  • ・従業員を解雇することになり、経営者・従業員の双方に精神的負担がかかる
  • ・事業で培ったノウハウなどの知的財産が消失する

廃業で失うものは少なくありません。特に従業員の雇用については、個人の生活に直結する重要な問題です。

 

2.廃業件数は増加している?

帝国データバンクの調査によると、2021年に全国で発生した休廃業・解散の件数は5万4,709件でした。前年に比べると約1,400件減少しているものの、依然として5万件を超える高水準の推移が続いています。

また、2021年は資産が負債を上回る状態で休廃業・解散を行った企業の割合が全体の62.0%と過去最も高くなりました。経営余力を残したまま自主的に事業を休廃業・解散するケースは、コロナ禍を境に増加しています。

出典:帝国データバンク「全国企業「休廃業・解散」動向調査(2021年)」

新型コロナウイルスの感染拡大による経営環境の変化は幅広い業種に影響を及ぼしており、東京商工リサーチの調査では、 調剤薬局の倒産件数が2021年に過去最多となりました。コロナ禍で病院の受診を控える傾向が続き、マスクや手洗いによって疾患が減ったことが大きな要因と考えられます。

出典:東京商工リサーチ「「調剤薬局」の倒産が過去最多、コロナで受診控えが響く(2021年1-8月)」

 

2-1.廃業を決断する理由・タイミング

会社や個人事業で経営者が廃業を決断する主な理由とタイミングは、以下の3つです。

・後継者不足

事業経営に問題のない企業であっても、後継者の不在を理由に廃業を決断する場合があります。特に中小企業では、少子化などの影響で事業承継が難しく、経営者の引退と同時に廃業するケースが多いです。

・事業の先行きへの不安

現在の経営状態が安定していても、将来的にどうなるか分からないという不安から自主的に廃業を決断する経営者も少なくありません。余力があるうちに廃業することで負債を完済し、取引先や従業員への対応を円滑に進めることができます。

・経営悪化

廃業を決断する最も一般的な理由が、経営状態の悪化です。赤字経営や債務超過が慢性化すると事業の継続が困難になり、倒産する前に自主的に廃業を決断する場合があります。

 

3.廃業に関するよくある疑問と回答

会社や個人事業を廃業する際は、書類の手続きなどが完了するまでに最短で2か月半程度、長ければ半年ほどの期間が必要になります。

苦渋の決断の末に廃業に至る場合も、実際に手続きを進める前に廃業について詳しく知っておきましょう。ここでは、廃業に関するよくある疑問と回答を解説します。

 

3-1.廃業するときに考えるべきことはありますか?

廃業は経営者個人の問題ではなく、取引先や従業員など関係者への影響が伴います。実際に廃業の手続きを進める前に、本当に廃業する必要があるのか冷静になって再検討してください。

将来の成長が期待できる企業や魅力的な価値を持つ企業であれば、M&Aを利用することで事業者の手元に資産が残る可能性もあります。

自己分析で答えが出ない場合は、事業者向けの支援サービスなどを利用して廃業や事業承継に詳しい専門家に相談するのもおすすめです。あらゆる可能性を考慮して、将来のために適切な選択をしましょう。

 

3-2.廃業の流れを教えてください

企業が廃業する際の一般的な手続き(清算手続き)は、以下のような流れで行われます。

株主総会の開催
  • ・解散について決議する
  • ・清算人を選出する
解散登記の申請
  • ・会社の解散と清算人選任の登記を行う
  • ・解散決議2週間以内に行う
税・社会保険関係の廃止届の提出
  • ・事業廃止届出書を提出する
  • ・健康保険・厚生年金の適用事業所全喪届を提出する
  • ・雇用保険適用事業所廃止届を提出する
債権の回収、現務の完了
  • ・会社が保有する債権の取り立てを実施する
  • ・現務の完了に必要な種々の業務を行う
官報に解散公告を掲載
  • ・債権申出の催告を行う
  • ・最低2か月間掲載する
  • ・把握している債権者には個別に通知する
財産目録・貸借対照表の作成
  • ・会社財産の現況を調査する
  • ・株主総会に提出し承認を受ける
  • ・清算結了登記が完了するまで保存する
清算
  • ・会社資産の売却、債務弁済、残余財産の分配などを行う
  • ・官報の公告期間終了後に行う
清算結了登記
  • ・清算後、清算結了についての登記を申請する
  • ・この時点で廃業が完了する

企業が廃業する際の手続きには、法人格を消滅させる「解散」と、資産や債務の整理を行う「清算」があります。他にも解散・清算に伴う確定申告や、残余財産の確定申告など、短期間でさまざまな手続きを行う必要があります。

 

3-3.廃業の際はどれぐらい費用がかかりますか?

企業の廃業には各種登記申請の他、さまざまな手続きにおいて費用が発生します。

登記費用
解散登記 30,000円
清算人登記 9,000円
清算結了登記 2,000円

出典:法務局「株式会社(解散,清算人選任(清算人が1人の場合))」

出典:法務局「株式会社(清算結了)」

官報公告費用 3万円~4万円程度
掲載する文章量により異なる

出典:全国官報販売協同組合「官報公告掲載料金」

その他の費用
司法書士、税理士、弁護士など専門家への報酬費用 廃業に関する清算手続などを依頼する場合
十数万円~
設備処分費用 会社で所有していた備品、機器などの処分
会社の規模により異なる
建造物の原状回復費用 事務所や事業所が賃貸物件だった場合
1坪につき数万円~
登記証明書の取得費用 数千円程度

登記と官報公告にかかる費用以外はケースによって金額が前後しますが、企業が廃業する際はまとまった額の費用が必要になることを覚えておきましょう。

 

4.廃業の回避にはM&Aが効果的な理由

M&Aとは、企業の買収・合併によって事業を第三者に引き継ぐ方法です。M&Aでは土地や建物といった有形資産だけではなく、人材や取引先の人脈などの無形資産も経営資源の一部として企業価値評価の対象になります。

従業員の雇用を維持できることが、M&Aで廃業を回避するメリットです。また、M&Aによる会社売却で、 廃業する場合よりも多くの資産を経営者の手元に残せる可能性があります。

後継者の不在を理由に廃業を選択する前に、M&Aの活用をぜひ検討してください。

 

まとめ

廃業とは、会社や個人事業を当事者の意志によって辞めることを指します。最も一般的な理由は経営の悪化ですが、後継者の不在や事業の先行き不安から、自主的に廃業を決断するケースも少なくありません。

廃業は、従業員や取引先など関係者の生活に影響する重要な問題です。実際に廃業の手続きを進める前に、本当に廃業する必要があるのか冷静に分析してみましょう。

M&Aによる企業売却は、廃業を回避する方法の1つです。第三者に企業を売却することで経営者は売却益を得ることができ、従業員や取引先への影響を最小限に抑えることができるメリットがあります。

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