薬局経営
居心地の良さが魅力!若手女性オーナーが運営する“Health& Beauty薬局” とは?
メディグレイス薬局(大阪府豊中市) 代表
文系から一転、薬局経営者へ。
まずはご経歴について教えてください。
実は昔から薬剤師を志望していたわけではありませんでした。高校時代は英語が得意で文系クラスにいたので、そのまま大学も文系に進むものだろうと思っていました。ですが、高校2年生のときに改めて自分の将来を考えたときに、医療の道へ進みたいと思いました。祖父母と一緒に住んでおり、一緒に病院へ行くことが多かったことも影響していたかもしれません。
高校3年生で文系から理系へ移りましたが、その時点で、「モル(化学)って何?」と言っているような状況でした(笑)。それから猛勉強して、北陸地方にある薬学部へ推薦入学しました。卒業後、調剤薬局での勤務を経てここ豊中へ戻り、2018年2月にメディグレイス薬局を開業しました。
かなり勇気の要りそうな舵切りですね! 医療分野というと医者や看護師など他にもいろんな職種がありますが、薬剤師を選んだのはなぜですか?
医師は……血を見るのが怖いので断念しました(苦笑)。また、一緒に住んでいた祖父母がかなりの数の薬を飲んでいたので、それを子供ながらに「こんなに飲む必要があるのかな?」と思ったり、朝昼晩決まった時間に飲んでいることを不思議に思ったりしていました。薬一つですごく調子が良くなることも、その逆もありました。人を助けるものにもなるし、副反応で苦しくなることもある……そんな薬という存在に、自分が関わって何か役に立つことができたらいいなと思うようになり、薬剤師を目指すことにしました。
漢方や薬膳にも興味があると仰っていましたが、何かきっかけがあったのですか?
大学時代に生薬のゼミに所属していました。私は数字の分析などは苦手で興味を持てず、直接口に入れるものなど身近に感じられるものに関心がありました。そこで先生に「自分に効く漢方はすごくおいしい」と言われ、体に合うとチョコレートの味がするということを聞いて、まさに中医学は一人ひとりを全体的に診る「ホリスティック医療」の原点だと思い、その世界に惹かれました。いろんな生薬を見られる部屋や薬草園もあり、これがこの顆粒になるのか……と、とても興味深かったです。
就職活動時は、漢方を扱っている薬局も考えられたのでしょうか?
いいえ、それはありませんでした。大学生の時から、将来自分で薬局を経営したいと考えていたので、卒業後は調剤薬局で経験を積むんだと明確な目標を持って就職活動をしました。そして研修制度などが充実している大手の調剤薬局へ入社しました。
目的と目標がとても明確ですね。早くから経営者になりたいと思われていたのは、どなたかの影響ですか?
そうですね。父、2人の祖父、叔父も会社を経営していましたので、ゆくゆくは何か自分で事業をするというのは当たり前のような感覚で、抵抗はありませんでした。 私の学生時代は調剤薬局がすごく普及していた時代でしたが、特色のある薬局は少なく、正直に言うと「この薬局に行きたい!」と思えるような薬局はありませんでした。そういう方はほかにもいらっしゃるのではないかと思い、薬局の概念を変えるというか、新しい形を作りたいなと思ったことも理由の一つです。また家族の体調のこともあり、大阪に帰ることは決めていました。
ゆくゆくは美容相談や漢方相談も。健康と美容をトータルサポートできる薬局を目指す。
一見サロンのような店内も素敵ですね。「未来を創る、Health&Beauty薬局」を掲げる西垣さんのこだわりが随所に見られる気がします。
ありがとうございます。店内の設計のみならず、間接照明やクロス、椅子なども一つひとつ吟味して自分で選び、装花も特注で作ってもらいました。インテリアのような手洗いスタンドも何ヶ月も待ってやっと設置できました。心地の良い癒される空間づくりを心がけています。
化粧品や紅茶などの商品については、他の薬局にはないものを置いていると思います。商品選びにはかなりこだわっていて、薬局の利益は度外視ですべて実際に自分が使用して納得できるものだけをラインアップしています。患者様には本当に良いものを使用してもらいたいと思っていますので、その思いが伝われば嬉しく思います。
スペースが足りなくなるような気がしますね……
そうですね、もっと置きたい商品もあるのですが(笑)。 「健康と美容」いうコンセプトは変わりませんが、調剤薬局という形態に限らずその時々で新しくニーズのあるものを作っていきたいと思います。
現在も学ばれている漢方や薬膳を、今後店舗でどう展開していきたいか教えてください。
今も栄養面、食事面の相談を頂く患者様には持っている知識をお伝えしています。薬膳についてはここでお料理を提供できるわけではないので、どういった手段で伝えていくべきか悩んでいるところですが、いずれは処方元が休診の月曜、火曜を利用して美容相談や漢方相談などを進めていきたいなと思っています。
西洋医学の薬は、ターゲットに対してアプローチしますが、中医学は広い視野で「ここが痛い」理由はどこが整っていないからなのかを考えてアプローチします。どちらもうまく使っていけるといいですね。
働く薬局のスタッフ様や西垣様の業務についてもお伺いできますか?
現在薬剤師は私を含めて7名、事務スタッフは3名で男性スタッフもいます。この辺りでは一番営業時間の長い薬局だと思います。定休日がなく、処方元の診療の延長対応も行っています。なるべくスタッフの負担が分散するように人員補充をしました。月曜日、火曜日以外は休みのスタッフがいたら代わりに自分が入っているという感じです。今年に入って自分が店頭に立つ時間は減りました。
ありがたいことに従業員が増えた分、経営者としての仕事が増加して今はそちらに専念しています。個人薬局のオーナーなのでオールラウンダーじゃないと務まらず、従業員の採用にしても、店舗に置く商品の選定ひとつにしても、すべて自分で行っています。店頭にこそ立っていないものの仕事には追われている毎日ですが、薬剤師としてだけではなく、経営者として学ぶ時間がとても刺激的で、充実しています。
ともに仕事に従事してくださるスタッフのおかげで今の薬局がありますので、常々スタッフにとって働きやすい環境を作っていきたいということは意識しています。具体的には就業規則を作り替えたり社労士さんと打ち合わせしたり、業務効率のためのシステムの導入を考えたりもしています。
10年後、20年後、どのような薬局になっていたいか教えてください。
患者様に安心して選んでいただける薬局に少しずつ近づいていっていると感じています。かかりつけ薬局として選んでいただき、その中で他の薬局にはないヘルス&ビューティー薬局としての機能を果たしていけたらいいなと思っています。
その一歩として現在、LINE@を活用した服薬フォローシステムの導入を検討しています。24時間の相談対応はもちろんですし、こちらから個別に服薬の状況確認のコミュニケーションなどを図ろうと思っています。私たちメディグレイスが、より患者様の身近に感じてもらえるような存在になれたら嬉しく思いますし、個々の患者様のニーズに合わせた対応を今後より実践していきたいと考えています。