M&A
デューデリジェンスとは|売り手の薬局を調査する方法を解説
M&A・投資を行う際は、買収・投資先となる企業の価値やリスクといった調査が欠かせません。そしてこのような調査を、「デューデリジェンス」と言います。
デューデリジェンスにはあらゆる種類(手法)が存在しており、適切な種類のデューデリジェンスを行わなければM&Aや投資に失敗する可能性もあります。
そこで今回は、デューデリジェンスの概要・行う目的やデューデリジェンスの6つの種類を徹底的に紹介します。最後にデューデリジェンスを行う手順も解説しているため、特にM&Aを検討している経営者は、ぜひ参考にしてください。
1.デューデリジェンスとは?行う目的も解説
デューデリジェンス(Due Diligence)とは、M&Aや投資を行う際に、買取対象(投資対象)となる企業やモノの価値・リスクを調査する一連の活動のことです。M&Aの場合、「企業」が調査すべき買取対象となり、不動産投資の場合は「物件」が調査すべき投資対象となります。日本語では「買収監査」と訳され、一般的には、「デューデリ」「DD」とも呼ばれています。
デューデリジェンスを行う目的は、大まかに「買収や投資に見合った価値があるかを適正に把握するため」です。特にM&Aにおいては、下記2つも目的として行われます。
〇買取対象のリスクを把握する
M&Aを行うにあたって、調査しておくのは企業価値だけではありません。買収後に何らかのリスクを背負ってしまわないためにも、デューデリジェンスを必ず実施して、隠れたリスクまできちんと調査する必要があります。
〇経営統合の準備を行う
M&Aは、買収後の経営統合をうまく進められて初めて「成功した」と言えます。経営統合の準備を進めるためには、デューデリジェンスを通じて、単純な過去の財務情報だけでなく今後の事業計画など重要な企業情報の調査・分析も行わなければなりません。
2.デューデリジェンスの6つの種類
デューデリジェンスの手法・内容には、下記6つの種類があります。M&Aを行う際には、各種類のデューデリジェンスを適切に行わなければなりません。
- 税務デューデリジェンス
- ビジネスデューデリジェンス
- 財務デューデリジェンス
- 法務デューデリジェンス
- 人事デューデリジェンス
- ITデューデリジェンス
また、それぞれのデューデリジェンスは有機的なつながりがあるため、M&Aに向けて評価する際には総合的な評価も必要です。
ここからは、デューデリジェンスの各種類の概要と、具体的な作業について解説します。
2-1.タックス・コンプライアンスの観点で欠かせない税務デューデリジェンス
税務デューデリジェンスとは、買取対象となる企業の税務状況に関する調査のことです。具体的な調査内容は、「買取対象企業は法人税・事業税など各種税金を適正に申告しているか」「買取対象企業による組織政変税制などの取り扱いや税務処理に問題はないか」などが挙げられます。
M&A後に、買い取った企業の税務申告漏れや税務処理の問題が発覚すると、買い手側がペナルティ・支払い義務を背負わなければなりません。追加徴税によって損失が生じることは、大きなリスクとなってしまうでしょう。
そのため、M&Aではあらかじめ買取対象企業が持つ税務リスクを税務デューデリジェンスで明らかにする必要があります。
2-2.ビジネスの現状と将来性を評価するビジネスデューデリジェンス
ビジネスデューデリジェンスとは、買取対象となる企業の事業活動に関する調査を指します。具体的には、市場全体の評価や市場における買取対象企業のポジションを確認し、外部環境・内部環境を分析し事業の将来性を見極めることが目的です。M&Aによる経営統合後は、広い視野で企業計画を練る必要があります。ビジネスデューデリジェンスは、将来的な企業計画を適切に検討するために重要な調査と言えるでしょう。
また、M&Aにおいては買取対象企業との経営統合後、シナジー効果がどれだけ得られるかも重要なポイントとなります。ビジネスデューデリジェンスは、シナジー効果の洞察にも有効です。将来を見据える力が問われるため、経営コンサルティング会社に依頼して調査するケースも多々あります。
2-3.財政的なリスクを評価する財務デューデリジェンス
財務デューデリジェンスとは、買取対象となる企業の財務状況に関する調査のことです。具体的には、過去と現在の財政状況・損益の状況と推移・今後の財務状況の見通しなどの調査が挙げられます。
デューデリジェンスを実施する前に買取対象企業から開示される財務関連の書類は、あくまで帳簿上の数値です。実際には、帳簿外負債の存在など書面上ではわからない財務状況が隠れている可能性があります。そのため、財務デューデリジェンスが必要となります。
実態の財務諸表の作成や財務状況の把握には専門知識を要するため、監査法人・公認会計士・税理士事務所に依頼して調査が行われることが一般的です。
2-4.統合後の法的リスクを評価する法務デューデリジェンス
法務デューデリジェンスとは、買取対象となる企業の法律・法務面に関する調査のことです。具体的には、「買取対象企業が締結している契約」「取引事業に関する権利」「債権・債務状況」などを調査します。調査範囲が広いことも特徴です。
買取対象企業が法的リスクを抱えていれば、M&Aによる経営統合後、訴訟など法律上の問題が生じることに注意しなければなりません。訴訟費用などの多大な費用が発生すると、経営に悪影響を及ぼしてしまいます。法務デューデリジェンスは、このような法律・法務リスクを防ぐことを目的に行われます。
法務デューデリジェンスは「リーガルチェック」とも呼ばれ、法律に関する知識を要するため、弁護士へ依頼して行われることが一般的です。
2-5.統合後の労使問題を防ぐ人事デューデリジェンス
人事デューデリジェンスとは、買取対象となる企業の人材・人事システムに関する調査のことです。具体的には、買取対象企業の労務管理や給与規程、さらに人事制度や人材の配置・構成・能力など、人事面に関するあらゆる情報を調査します。
M&Aによるシナジー効果を得るためには、企業の原動力とも言える人材のマネジメントが必須です。合併・統合における人事上のメリットやリスクを把握し、準備を進めるためにも、人事デューデリジェンスは欠かせません。
2-6.システムの運用状況を把握するITデューデリジェンス
ITデューデリジェンスとは、買取対象となる企業が導入するIT関連ツール・システムに関する調査のことです。例えば、買取対象企業と自社とで業務に使用するITシステムのタイプが大きく異なる場合、経営統合後にITシステムを見直す必要があります。
統合後に初めて導入するシステムの違いを把握してしまうと、システム環境の見直しに多大なコストや時間がかかってしまうでしょう。そのため、買取前にITデューデリジェンスを行い、統合後のシステム環境の課題発見や見直しをあらかじめ行っておく必要があります。
3.デューデリジェンスを行う方法・手順
適切なデューデリジェンスを実施するためには、手順を踏んで行う必要があります。手順を踏んでデューデリジェンスを実施することで、より正確かつ効率的な調査が行えるでしょう。ここでは、M&Aにおいてデューデリジェンスを行う方法を流れに沿って説明します。
〇事前準備
M&Aでは、まず初めに買取対象企業から登記簿謄本・事業計画書などの初期情報を受領します。これらの初期情報を受け取ったうえで、キックオフミーティングが開催されることが一般的です。
M&A候補が正式に決定したら、デューデリジェンスを行うかどうかを決定します。買取対象企業の特徴・特質を見極めたうえで、特に調査対象となる内容が何かも話し合ったうえで、デューデリジェンスの種類や方針を決めましょう。
〇調査の実施
買い手側の企業で決定したデューデリジェンスの種類や方針に基づいて、デューデリジェンスを実施します。買い手側企業は、知りたい情報を買取対象企業に要望することで、買取対象企業側から資料が用意されることが一般的です。デューデリジェンスを行う前は、必ず相手企業と秘密保持契約書(NDA)を締結します。
スムーズに情報・資料の受け渡しを進めるためにも、事前準備の時点でデューデリジェンスに必要な資料リスト(IRL)を作成しておくとよいでしょう。また、弁護士や税理士など外部の専門家に依頼することもおすすめです。
〇報告・検討
買取対象企業側からあらゆる情報開示がされたあとは、その資料を見て価値やリスクを明らかにする分析作業を行います。資料内容が不十分と判断された場合は、追加資料を依頼することも可能です。
担当者や外部専門家が調査結果を作成し、その調査結果に基づいてM&Aを行うかどうかを検討します。費用影響の大きいリスクが認識された場合は、買取対象企業に対して価格交渉を行うことも可能です。
なお、デューデリジェンスを外部専門家に依頼する場合、当然ながら依頼費用が発生します。費用相場は、中小企業だと数十万~数百万円程度で、規模の大きい企業であれば千万円近くです。多額の調査費用が必要となりますが、知識を持ったプロのサポートを借りて適正にM&Aを進めたいのであれば必要な費用と言えるでしょう。
まとめ
デューデリジェンスとは、M&Aや投資を行う際に、買取対象(投資対象)となる企業やモノの価値・リスクを調査する一連のプロセスです。英語で「Due Diligence」と書き、「デューデリ」「DD」「買収監査」とも呼ばれます。
デューデリジェンスには、目的の異なる6つの種類が存在します。M&Aによる経営統合を成功させるためには、買取対象企業のあらゆる情報を把握するためにもデューデリジェンスが欠かせません。
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