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トラブルを防ぐ!契約書の作成方法と最低限押さえたいポイント

他会社や顧客と何らかの取引・契約を交わすとき、起こり得るトラブルをなるべく防ぐためには「契約書」が欠かせません。

そして契約書には、各企業でそれぞれ異なる契約内容に応じた適切な内容を記載する必要があります。知識を持たず、テンプレートから漠然と契約書を作成するだけでは契約書の目的を果たせず、後になって起こるトラブルの原因となりかねません。

そこで今回は、契約書の概要や重要性から作成方法、さらに作成時のポイントと注意点まで徹底的に解説します。自社のサービス・契約内容に適した契約書を作成したいという方は、ぜひ参考にしてください。

 

1.契約書とは?代表的な契約書の種類

契約書とは、企業と企業、もしくは企業と顧客の双方が、意思表示を合致させたうえで何らかの契約を行ったことを証明する書面です。

基本的に、契約や取引そのものは口頭、いわゆる口約束でも成立するため、取引の締結などにおいて契約書の作成が義務付けられているわけではありません。しかし、権利と義務が複雑となりがちなビジネスにおいては、当事者同士で契約書をきちんと交わしておかなければ契約内容が不明瞭となり、「言った言わない」のトラブルが起こりやすくなります。

契約書を作成する最大の目的は、このようなトラブルを防ぐためです。万が一トラブルが起きて訴訟・裁判に発展しても、契約書があれば重要な証拠となり、解決までスムーズに進めることができるでしょう。

また、契約書とひとくちに言っても、記載内容や目的に応じてさまざまな種類があります。

契約書の種類
  • 取引基本契約書
  • 売買契約書
  • 秘密保持契約書
  • 業務委託契約書
  • 雇用契約書
  • 代理店契約書 など

ビジネス上で使用される機会が多い契約書は、主に上記の種類です。

 

1-1.契約書を自社で用意すべき理由

世の中には、さまざまな種類の契約書テンプレートが存在します。しかし、契約内容を明確にでき、トラブルもきちんと防げる契約書を作成したいのであれば、自社でオリジナルの契約書を用意すべきと言えます。なぜなら、契約書テンプレートに記載されている内容は、自社のサービスや商品、取引内容と適していないことが多いためです。

しかし、1からオリジナルの契約書を作り上げることは決して容易なことではありません。ある程度のひな形から、自社サービス・商品を他社・顧客に提供することを具体的に考えて、トラブルやリスクをきちんと防げる内容を随時盛り込んでいくことをおすすめします。

なお、契約書の作成者は基本的に当事者どちらでも問題ありません。しかし、取引や交渉の主導権を握るためにも、なるべく自社で契約書を用意し、製本まで行うことがおすすめです。

 

2.契約書の作成方法

簡単な契約書であれば、ある程度の作成プロセスを把握しておけば、比較的誰でも作成することが可能です。下記に、契約書を作成する基本の流れを紹介します。

(1) 契約内容を確認する
(2) 契約書のドラフト(案)を作成する
(3) 契約書のドラフト(案)を、取引先企業や顧客に確認してもらう
(4) 契約書の確認・修正を行い、最終合意をする
(5) 契約書の製本と署名・押印をする

次に、基本的な契約書の構成と形式についても説明するため、作成のヒントとして参考にしてください。

 

2-1.契約書の構成

契約書は、下記のような構成であることが一般的です。

表題(タイトル) 契約書の最上部には、表題(タイトル)をつけましょう。表題は、契約書の種類だけでなく法律上のルールによって異なることにも注意が必要です。
前文 表題の下には、契約における当事者を明らかにし、当事者の略称も定義(主に「甲」と「乙」)しておきましょう。
本文 前文の後は、契約内容や取引条件を具体的に示した本文を記載します。本文には主に、「契約内容」「損害賠償」「権利義務の譲渡禁止」「契約解除事由」「秘密保持」「合意管轄」などを記載します。

記載方法は基本的に自由ですが、一部法律によって規定があることに注意してください。「第一条 (〇〇)」と項目ごとに条で区切ることが一般的です。
後文 本文の後は、契約の合意・成立を確認した証明や、契約書を何通作成して誰が所持するかを記載します。
日付欄・署名押印欄 契約書の最下部には、日付欄と署名押印欄を設けましょう。自社と相手方の分で2つの日付欄・署名押印欄が必要です。2社以上の契約の場合は、その分追加しなければなりません。なお、基本的に日付欄の日付は双方が合意に至った日となります。

 

2-2.契約書の形式

契約書の作成が一通り終わったあとは、署名・押印へ進めるために製本をします。製本する際は、作成後の契約書を第三者により改ざんされないようにすることが重要です。

契約書が複数枚ある場合は、順番に沿って契約書をすべてまとめて、左側の2カ所をホチキスで留めましょう。その後、ホチキスの芯が隠れるよう製本テープを貼ります。また、用途に合わせて割印・契印・印紙も忘れずに行いましょう。それぞれの詳細は、下記の通りです。

割印 割印とは、契約書が第三者により改ざん・偽造されることを防ぐために、自社と相手方の契約書にまたがるよう捺印することです。すべての契約書ではなく、重要な契約書のみに行います。
契印 契印とは、契約書の一部ページが差し替えられることを防ぐために、ページ見開き部分にまたがるよう印鑑を押すことです。複数枚にわたる契約書の場合は基本的に必要となります。
印紙 契約書の種類によっては印紙税の対象となる場合があり、印紙税の対象となる契約書には印紙の貼り付けが必須です。印紙の貼り付けが必要となるのは、自社保管分の1部のみとなります。貼り付ける場所に決まりはないものの、1ページ目の右上が一般的です。

 

3.契約書を作成する際のポイント・注意点

契約書を正しく作成しなければ、「代金の回収ができない」「サービスや商品の提供が打ち切られる」「賠償請求を受ける」など後々のトラブルの原因となるだけでなく、トラブルが発生した際の解決も難航するおそれがあります。

そのため、契約書を作成する際は起こり得るトラブルをきちんと洗い出したうえで、リスクを最大限までなくさなければなりません。最後に、契約書を作成する際のポイントや注意点を詳しく説明します。

 

3-1.「権利」と「義務」を一般的な言葉で説明する

契約書の作成時は、権利と義務についてわかりやすい一般的な言葉で説明するようにしましょう。ビジネスにおいて、自社と相手方で権利と義務の所在は複雑となりがちです。自社の権利または義務を定めたものなのか、相手方の権利または義務を定めたものなのかをわかりやすく記載しなければ、契約内容を正確に伝えることができません。

また一般的な言葉で説明していなければ、もしもトラブルが起きて裁判に発展したときも、裁判官が理解することができず、正しい判断ができない可能性もあります。権利と義務について記載するときは、業界用語やオリジナル用語を使用せず、第三者が見ても理解できる言葉にすることが必須です。

 

3-2.法律の内容や過去の判例を調べておく

契約書の種類や内容によっては、記載すべき条項が法律により定められていることがあります。法律で義務付けられている項目の記載漏れがあれば法令違反となり、もしもトラブルが起きた際は確実に不利となるため、法律に沿った記載項目か確認したうえで正しい契約書を作成しましょう。

また、法律で記載すべき項目が定められていない場合でも、契約書に関する法律や過去の判例のリサーチは必須です。契約書をめぐる過去の判例が一つの指標となることもあるため、関連する契約の判例はなるべく調べておきましょう。

 

3-3.ひな形やテンプレートはそのまま使わない

ネット上では、あらゆる契約書のひな形・テンプレートが無料ダウンロード可能で公開されています。種類も豊富で、ある程度の構成や形式が整っていることからそのまま使用する企業も少なからず存在しますが、契約書のひな形やテンプレートをそのまま使用することは推奨しません。

ひな形やテンプレートは自社のサービスや商品、契約内容に適したものでないケースがほとんどで、そのまま使用してもトラブルを防ぐ役割を果たせるとは言えないでしょう。公開されているひな形やテンプレートを使用したい場合は、自社サービスや商品、契約内容に沿って改変することが必須です。

また、どうしても契約書の作成が難しいという場合は、弁護士をはじめとした専門家への依頼をおすすめします。専門家への依頼であればリーガルチェックも可能で、個人で作成するよりもリスクを大幅に削減することができるでしょう。

 

まとめ

契約書とは、企業間、もしくは企業・顧客間において、意思表示を合致させたうえで何らかの契約を行ったことを証明する書面です。契約書を作成する目的は、契約内容の明確化・取引相手とのトラブル予防が挙げられます。

契約書を正しく作成しなければ、代金の支払いがされなかったり、最悪の場合相手方から賠償請求を受けたりする可能性があるため、基本の作成プロセスに従って、第三者が見ても理解できるようわかりやすく、かつ詳しく作成する必要があります。

どうしても自社での契約書作成が困難という場合は、専門家への依頼を検討しましょう。専門家であれば法律や過去の判例もくまなくチェックしたうえで、適切な契約書を作成できます。ここまでの内容を参考に、ぜひ適切な契約書を作成してください。

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