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バイアウトの概要と4つの種類|メリット・デメリットを詳しく解説

バイアウトは、企業業績が不振に陥った際などに自社の経営者や従業員が株式を取得し、企業を買収する仕組みです。調剤薬局などの業種でも、経営者の高齢化を背景に事業承継の手段として注目を集めています。

当記事では、バイアウトの基礎知識やM&Aとの違い、バイアウトの4つの種類とメリット・デメリットを解説します。バイアウトの成功事例も2つ紹介するため、バイアウトに興味のある経営者や従業員は、ぜひ参考にしてください。

 

1. バイアウトとは?

バイアウト(Buy Out)とは、株式の取得により企業の経営権を得ることです。企業の経営が悪化した場合には、経営方針や企業組織の抜本的な改革が必要となります。企業の経営者や従業員が自社の株式を取得し、経営権を譲受した上で経営再建を図る手法がバイアウトです。

企業の経営者や従業員は、バイアウトで取得した企業の業績を改善することで利益を得られます。一方、企業の創業家や経営者は、株式の売却により起業資金を回収できます。バイアウトは、取得者と売却者の双方にメリットのある手法です。

従来、バイアウトはアメリカで多く採用され、日本では親族内承継が主流でした。現在ではバイアウトが企業にもたらす成長や効果が見直され、多くの日本企業で採用されています。

 

1-1. バイアウトとM&Aの違い

M&A(Merger And Acquisition)は日本語で企業の合併・買収を意味します。経営権の移行に関する部分では、バイアウトと類似した言葉です。しかし、バイアウトとM&Aは買い手となる主体に大きな違いがあります。

バイアウトでは企業の経営者や従業員など、企業内の関係者が買い手であることが多い一方、M&Aではほとんどの場合、企業外の人物が買い手です。共通する部分はあるものの異なる意味を持つ言葉であるため、注意してください。

 

2. 【種類別】バイアウトの概要とメリット・デメリット

バイアウトは、バイアウトを実行する主体により4つの種類に分けられます。

  • MBO(マネジメント・バイアウト)
  • EBO(エンプロイー・バイアウト)
  • LBO(レバレッジド・バイアウト)
  • MEBO(マネジメント・エンプロイー・バイアウト)

ここでは、各バイアウトの概要とメリット・デメリットを詳しく紹介します。

 

2-1. MBO(マネジメント・バイアウト)

MBO(マネジメント・バイアウト)は、企業の経営者あるいは経営陣が自社の株式を取得する形式のバイアウトです。

株式を経営者自ら保有するため、株主の意向に左右されない中長期的な視点での経営が可能となります。上場企業では、上場廃止の際にも採用される手法です。

・メリット

MBOのメリットは、株主の意向に配慮する必要がなくなる点です。多くの株主は配当を得るために短期的な利益を追求します。MBOを行えば、企業の成長に沿った長期的な経営活動が可能です。

・デメリット

MBOのデメリットは「株式の非公開」と「利益相反の危険性」があげられます。経営者自身が株式を持つため、経営者に対する監視や制限の仕組みづくりが重要です。

 

2-2. EBO(エンプロイー・バイアウト)

EBO(エンプロイー・バイアウト)は、企業の従業員が自社の株式を取得するタイプのバイアウトです。

EBOは、後継者がいない中小企業の事業承継で多く採用されています。EBOを実施することにより、社内の状況をよく知る従業員へ経営権を譲渡でき、スムーズな経営の引継ぎが可能です。

・メリット

EBOのメリットは、事業を承継できる親族がいない場合でも企業活動を継続できる点です。また、承継者は従業員であるため、他の従業員や得意先からも信用されやすく、受け入れられやすい側面があります。

・デメリット

EBOのデメリットは、承継する従業員に多額の資金力が求められる点です。資金が不足する場合には、金融機関から資金を調達する必要があります。

 

2-3. LBO(レバレッジド・バイアウト)

LBO(レバレッジド・バイアウト)は、MBOやEBOと異なり、社外の企業や個人が株式を取得するタイプのバイアウトです。

株式を取得する企業や投資家は、取得先企業の資産や期待されるキャッシュフローを担保に金融機関から資金を調達します。資金を外部から調達するため、比較的少ない自己資金でのバイアウトが可能です。

・メリット

LBOのメリットは、少ない自己資金で大きなリターンが期待できる点です。また、調達した資金の利息返済は損金へと算入でき、節税効果が見込めます。

・デメリット

LBOのデメリットは企業の再建ができなかった場合、調達した資金返済に困難が伴う点です。また、LBOでの借入は金利が高く多額の利息を支払う必要があり、ハイリスク・ハイリターンな側面を持ちます。

 

2-4. MEBO(マネジメント・エンプロイー・バイアウト)

MEBO(マネジメント・エンプロイー・バイアウト)は、企業の経営陣と従業員が協力して株式を取得するタイプのバイアウトです。株式を所有する経営陣と従業員そのものが企業を経営することで、事業への参画意識が向上し、一層の事業成長が見込めます。

・メリット

MEBOのメリットは、企業に所属する経営陣や従業員のモチベーションの向上です。企業の業績アップが自らの利益獲得につながるため、意識面での改革が期待できます。

・デメリット

MEBOのデメリットは、実現まで多くのステップが必要な点です。株式所有者との話し合い、経営陣や従業者の承諾、株式取得のための資金調達などさまざまな問題があり、多くの労力と時間がかかります。

 

3. バイアウトの注意点2つ

バイアウトを実施すると、企業の経営権は株式を取得した者へと移行します。経営権の移行にはいくつかの問題が伴うため、注意が必要です。特に、「従業員や役員の待遇」と「買い手企業からの要望」は事前に対策を練っておくとよいでしょう。

注意点の詳細は以下の通りです。

・従業員や役員の待遇が変わる場合がある

経営権が経営陣や従業員、社外の企業へと移行すると、経営方針や企業運営にも変化が生じます。その結果、従業員や役員の待遇が変わる場合があるため注意してください。特に社外の企業へ経営権を譲渡する場合には、従業員や役員から不満や反発が出ないように配慮する必要があります。

・買い手企業から要望を受ける可能性がある

LBOのように社外の企業からバイアウトを受けた場合、買い手企業から成長戦略や経営計画への要望を受ける可能性があります。買い手企業の特性や傾向を事前に把握し、どのような要望が想定されるか検討しておきましょう。

 

4. バイアウトの成功事例2選

近年、日本でも多くのバイアウトが実施され、関係企業だけでなく業界全体に影響を及ぼす事例も数多く見られます。ここでは、成功事例として有名な「ソフトバンク株式会社」と「株式会社アデランス」の2つの例を紹介します。

・ソフトバンク株式会社

ソフトバンク株式会社のボーダフォン日本法人に対するLBOは、バイアウトの中でも成功と評価される代表例です。ソフトバンク株式会社とボーダフォン日本法人が持つ通信ネットワークを統合することにより、大きなシナジー効果を生み出しました。

出典:ソフトバンク株式会社「ボーダフォン株式会社の買収およびヤフー株式会社との携帯電話事業に関する業務提携について

・株式会社アデランス

株式会社アデランスは2017年にMBOを実施し、株式の上場を廃止しました。背景には、市場の変化による経営不振があります。

アデランスの経営陣は投資ファンドから資金提供を受け、投資ファンドの経営ノウハウなども参考に経営再建を目指しました。株式会社アデランスの事例は、バイアウトによって自由度の高い経営を促進させた好例です。

出典:株式会社アデランス「当社株式の上場廃止のお知らせ」

 

まとめ

バイアウトは、株式の取得により企業の経営権を移行する仕組みです。基本的に、株式取得は経営者や従業員により行われます。株式を経営者や従業員が取得することにより、自由度の高い経営や、従業員へのスムーズな事業承継が可能です。

バイアウトには、MBO・EBO・LBO・MEBOといった4つの種類があります。それぞれにメリット・デメリットがあるため、自社の状況に合った手法の選択が重要です。バイアウトを実施する際は、経営権の移行に伴う注意点に配慮しましょう。

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